ビタミンの必要性

生物は、生存・生育に必要な代謝経路における酵素化学反応などの生理機能を営むために、様々な生理活性作用のある有機化合物を必要とします。
進化の過程で、これらの化合物のうち、不足すると致命的なものは体内で生成できるようになりました。
ところが、短期間なら不足しても比較的問題ない化合物や容易に食料から摂取できる化合物は、 それを摂取できずに病気や死に至る危険性よりも、体内で生成する器官を備えるコストの方が大きいため、 次第に体外のみ(動物では食物、単細胞生物では環境水など)から摂取するようになり、 合成に必要な代謝経路を失うようになったか、そもそもそのための代謝経路を進化させませんでした。こうした有機化合物がビタミンになったと考えられています。

ビタミンの働き

例えばコラーゲンの生成など、水素運搬体を必要とする代謝経路の多くに必須で動物の生存に欠かせない 生理活性物質であるアスコルビン酸は、ほとんどの哺乳類にとって体内で合成されて必要をまかなう物質です。
しかしヒトを含む多くの霊長類やモルモットのような一部の哺乳類では、 これを合成する代謝経路を喪失しており、体外から食物としての摂取が生存上必須となっています。
つまり多くの哺乳類にとっては、アスコルビン酸は体内で自給されている多くの生理活性物質の一つに過ぎないが、 霊長類の多くとモルモットにとってはビタミンの一種であるビタミンCとなっています。

またカロテノイドは、全ての生物の細胞内の代謝経路において重要な役割を果たしており、 たいていの生物、すなわち古細菌と殆どの真正細菌、多くの真核生物(原生生物、植物、菌類)は、 自らの代謝経路において合成する事によって自給しています。
しかし全ての後生動物はこの代謝経路を喪失しており、カロテノイドを他の生物を捕食する事によって摂取しなければなりません。
そのため、ほとんどの生物にとってビタミンではないカロテノイドは、後生動物にとってはビタミンとなります。
ヒトでは体内で必要なカロテノイドであるレチノイドをビタミンAと称し、 レチノイド自体やβ-カロチンなどのレチノイドに変換可能なプロビタミンAと称される一群のカロテノイドを、 食品とともに摂取しなければ生存できません。